株式会社ヌーラボ 代表取締役
橋本 正徳氏(Masa)
福岡出身。飲食業や劇団主催などに携わる。1998年、父親の家業である建築業界で働き、2001年にプログラマーに転身。派遣プログラマーとして働いていたものの、「もっと自分たちのソフトウェアを使ってくれる人と対話をしながらものづくりをしたい」と考え、2004年に福岡にて仲間とともに株式会社ヌーラボを設立し、代表取締役に就任。現在は、プロジェクト管理ツール「Backlog」や作図共有ツール「Cacoo」、ビジネスチャットツール「Typetalk」を開発・提供している。
自然電力株式会社 取締役
磯野 久美子氏(Kumiko)
大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社し、エネルギー・化学・製薬業界へのコンサルティングに従事する。その後自然電力株式会社し、経営企画室、ドイツの再エネデベロッパーEPCとの合弁であるjuwi自然電力オペレーション株式会社の代表取締役、グループ全体のコーポレートサービス部門責任者などをつとめる。現在自然電力取締役(HR, 総務、法務担当)。カリフォルニア大学バークレー校Haas School of Business MBA終了。
2022年8月にアルムナイ限定イベント※を開催。(※継続学習と異業種の次世代リーダーとの出会いを目的として、ファカルティによる勉強会イベントを定期開催しています)第1回目の今回は、Managing Complexityファカルティであり、『会社は「仲良しクラブ」でいい』著者でもある株式会社ヌーラボ代表取締役 橋本正徳さんに「チーム運営論」について語っていただきました。質問役には、同じくファカルティであり自然電力株式会社取締役の磯野久美子さんをお招きし、様々な観点から切り込んでいただきました。ビジネス最先端のリアルとMnagaing Complexityでの学びを紐づけて定着を深める有意義な場となりました。以下、イベント内容を一部抜粋してご紹介しています。
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理想のリーダーシップスタイルはトップダウン?フォロワーシップ?
Kumiko:いまのMasaさんのスタイルは、弱みを開示してエモーションに訴えて皆の力を引き出すスタイルですが、組織の変遷のなかでリーダーシップスタイルは変化をしてきましたか。
Masa:起業したての頃は、よく本に書いてあるリーダーシップのイメージで社長らしくというのを背負って頑張っていたけど、 途中で向いていないことがわかった。それでも7、8年は頑張ってみたけど、結局できなかったんです。それで力を抜く今のスタイルになっています。トップダウンのスタイルではなく、フォロワーシップの形をとった代表をやっています。
Kumiko:優秀な人材を組織に巻き込むための工夫とは。
Masa:会社がコラボレーションを掲げていて僕が一番それを体現しているので、そこに惹かれる人が集まってきています。さらに、Follow The follower という考え方でやっています。例えば僕が「コラボレーションカンパニーにしたいんだ」と言うと、周りの人たちがそれならこういうことやりたいと言い出すので、僕は「それやろう」って言う。言い出しっぺは僕なんだけど、その言い出しっぺについてくる人についていくということをやります。そうすると、on the same boatになっていく。僕はただ楽しんでゴールだけ提示して、そのためのアイディアに賛成していく、そうするとグルーヴが生まれていく感じがありますね。
イノベーションを目指すときのパーパスのあり方
Kumiko:Masaさんがヌーラボを始めたとき、「楽しいからやる」から始まっている気がします。楽しいからやり続ける、さらに楽しくなる、ここにパーパスは必要なんでしょうか?
Masa:初期の立ち上げ時は言語化もできていなくて、バイブスみたいなやつでやっていた。僕の場合は言語化がすごく苦手なのと、言語化に対して割と怪しい見方をしています。言語化するとその言語に縛られちゃうし、解釈が人によったりもするので、言語じゃないところをまずは共にする感じはありますね。なので、ミッションビジョンバリューはいらないという話ではないです。パーパスはもちろん必要なんだけど、それを何で表現するかが難しくて。言語ではなくて写真を使うこともあります。
Kumiko:Masaさんが生きている世界は、イノベーションがより大事。私たちもイノベーションし続ける必要はあるが、その方向性はどちらかという社会課題解決に向いている。それに対してMasaさんたちのように何か新しいものを生み出したい、その方向性はAでもBでもCでもいいというときには変に決めすぎない方がいいのかもしれない。1+1+1が見たことのない1になるという世界なのでどっちにもいける余白が残るように。
Masa:それはありますね。
インターナショナルな組織でエンゲージメントを高めるための工夫
Kumiko:ヌーラボさんはインターナショナルな組織。全然別の場所にいてタイムゾーンも違って、会えなかったりもする中で、どうやって仲良しクラブの雰囲気を保ち続けているのでしょうか。
Masa:まずはチャットです。仕事に関係のないチャットが半分以上を占めています。例えば「Dog」というチャンネルでは、犬を飼っている社員がひたすら犬の写真をUPし続けている。そうするとはじめて話すときに「(この人そういえば、シュナウザー飼ってたな)」と思い出す。それがあるだけでもエンゲージメントが高まる。そういった工夫のおかげで、1回も会ったことはないのにその人のいい人の部分をよく知っているという状況は作れています。仕事上の付き合いとはいえプライバシーのところが見え隠れしていた方がエンゲージメントが高まります。
もう少し深いところで、相手の考えや大事にしていることを共有し合う会話も社内で自発的に行われています。いろいろな考えの方がいますし、ちゃんとコミュニケーションするというのは絶対に必要なこと。言語化したコミュニケーションじゃなくてもいいので、なにかしらやった方がいい。ダイバーシティを許容するしないという話ではなくて、そもそもダイバーシティの中に暮らしているんだから早く認めた方がいいという感覚でいて、社員にも常に言っています。
Kumiko:組織が大きくなってくると、中途入社やプロジェクトの一部にしか関わらない人が出てくる。そういう人たちはどうやってSame boatに乗るんでしょうか。
Masa:プロジェクトは極力分割して最小単位にしているので、たくさんプロジェクトメンバーがいて困るということはない。中途入社の人に対しても、Welcomeな雰囲気で育成に携わってくれています。その秘訣としては、社員が採用に深く関わっていること。僕が最終面談なんですが、そこに至るまで面談でもそれ以外でもずっとフォローしていて、話す機会が多くある。この人に入ってきてもらいたいと思って最終面談に薦めた人なので、その人への愛着もわくし、入社後も優しく丁寧に育成してくれています。
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この他にも、情報開示とパワーダイナミクス、善意とガバナンスを両立させるテクノロジーの在り方、スキルセット以外の採用要件についてなど、ビジネスの最先端をいくMasaさんのリアルな話を存分に伺うことができました。
参加者からは、Mnagaing Complexityで学ぶ「Learning Outcome」との接続を意識した感想が多く寄せられ、学んだ知識の定着、そして継続学習の場として満足度の高い催しとなりました。Managing Complexity修了者が参加できるアルムナイコミュニティにて、全文を公開しています。
それでは、次回以降の開催もお楽しみに!
Alumni Event Report 01
株式会社ヌーラボ 橋本 正徳氏 × 自然電力株式会社 磯野 久美子氏